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直販投信について

2016年07月27日

今回は投資信託のお話です。 

投資信託の中ではいまだマイナーな存在ながら、一部投資家からは注目されている直販投信を紹介します。
投資信託協会のホームページによると、現在我が国には、95社の投資信託運用会社があり、5,000本強の
投資信託(以下、投信)があります。
この殆どの投信(99%以上)は、証券会社や銀行(販売会社)を通じて販売されていますが、直販投信
はこれらの販売会社を通さず、投資家(受益者)(*)が投資信託運用会社から直接購入する投資信託です。

 現在、我が国には直販投信を運用している運用会社は8社あり、11本の投信が運用されています。
このうち4社の投信は、日本株のアクティブ運用(*)で、残り4社は、他社の投信を複数組み入れ分散投資
を図る、いわゆるファンズオブファンズです。 ここでは、前者の日本株アクティブ運用を行っている直販
投信4社をとりあげます。
(*)受益者:投信を購入して保有する投資家
(*)アクティブ運用:投信固有の投資戦略により、日経225や、トピックス等のインデックスを上回る
 運用成績を目指す運用。

■直販投信誕生の背景

直販投信の先駆けとなったのは、さわかみファンド(運用会社:さわかみ投信(株))で、1998年4月に
運用を開始し、現在では純資産残高2,500億円の巨大ファンドとなっています。 
その後、リーマンショックの前後、2008年9月に、ひふみ投信(レオス キャピタルワークス(株))、
2009年1月に、コモンズ30(コモンズ投信(株))、2010年3月に、結い2101(鎌倉投信(株))が運用
を開始し現在に至っています。

彼らは、投信業界でのベンチャーのような存在ですが、その創業者達に共通しているのは、もともと大手の
金融機関や投信会社にいて資産運用の世界に身を置く中で、業界の長年の慣行や悪弊に疑問を感じ、それを
反面教師として、投資家本位の真の長期投資を実現するためのファンドを立ち上げようとしたことでした。

あるシンクタンクのレポートによると、我が国の投資信託の平均保有期間は2.7年(2015年)ということ
です。因みに、米国は4.5年、英国は4.6年で、日本での投信の保有期間が特に短い事が分かります。 
もし、購入時手数料3%の投資信託を2.7年毎に買い替えると、10年で約11%の手数料を支払うことになり
ます。 

本来、投資信託は短期で利益を追求するような投資商品ではないはずですが、このように保有期間が短期に
なってしまう背景を考えると、そこには販売会社である証券会社や銀行の販売姿勢に問題がありそうです。 
実際に投信を設計し運用を担うのは投資信託会社ですが、その多くが大手の証券会社や銀行の系列であり、
どうしても力関係から、販売会社の意向に沿った商品設計で投信の設定が行われてきた事が背景にあります。 

その結果、投信販売の現場で目にする現象として次のような傾向を指摘することができます。

  • いかにも一般受けしそうな流行りのテーマを掲げ、次々新しい商品が売り出される。 
  • 売れ筋の多くが毎月分配型、かつ、通貨選択型に代表される、複雑な仕組み(デリバティブス)
    との組み合わせ。或いは、ブル型・ベア型のようなハイ・リスク、ハイ・リターンを狙う商品設計。 
  • その上、販売後の運用状況、運用成績のフォローアップは形式的に報告書を送付するだけで、
    丁寧な説明は殆どない。
    これらは、金融機関が販売手数料を稼ぐことを優先させてきたための現象ともいえます。

また、見栄えのする立派な販売用資料や、さまざまなメディアを通じての宣伝もコストに反映されている
はずです。

これに対して、直販投信はいわゆる販売宣伝活動はほとんど行っていません。どのように個人投資家の間で
広まり残高が積み上がってきたかと言えば、主にSNSも含めた個人投資家(受益者)からの口コミや、新聞
、雑誌、TV等メディアで取り上げられた結果です。

■直販投信の特長

その直販投信の大きな特長としては次の3点をあげることがでます。

●販売手数料はゼロ・・・販売手数料に関しては、インターネット証券を中心にノーロードファンドも増えて
きているので、直販投信だけの特長ではありません。但し、殆どのアクティブ投信では、2~3%前後の販売
手数料が購入時に掛かります。
一方、信託報酬に関しては、下図の通り1%を少し上回った水準で、インデックス投信よりは若干高くなって
います。 
●長期運用・・・各社のホームページを見ると、4社にほぼ共通している運用方針として次のようなことが書
かれています。
 ‘社会に必要とされる良い会社に、長期的視点で投資をする’。もちろん、‘社会に必要とされる良い会社’の
評価基準は各投信によって違いがあり、当然組み入れ銘柄もそれぞれ特徴があります。なかでも、中・小型
株を積極的に組 み入れている、ひふみ投信、鎌倉投信は、社長との面談や従業員へのヒアリングも含む地道
な会社訪問を通じた情報収集による企業分析を、銘柄選択の基本としているようです。
●フォローアップ・・・直販投信の一番の特長は、受益者に対する運用報告と情報提供に力をいれている
ことです。
各社とも定期的に運用報告会、セミナー 等を開催し、そこでは、運用責任者、実際に運用を担当している
ファンドマネージャーから直接、当面の運用方針、個別の銘柄選択の理由、背景等を聞くことができます。
彼らの話に納得出来れば、安心して ‘お金’託すことができるし、もし、考え方が合わなければ、‘お金’を引き
上げるという逆の判断もできます。

■インデックス投信との比較

アクティブ投信の過半は、コストも含めて考えると結局市場(インデックス)に勝てないというのは、投信
を語る上での常識のように言われてきました。 ここでは、直販投信についてもアクティブ投信との客観的
な比較をしてみます。 
下表は、モーニングスターの投信データを基に作成したものです。
トータルリターンに関しては、2013年以降のアベノミクス相場をほぼ反映しているといえますが、過去1年
間に関しては、昨年のチャイナショック以降の下落相場、また直近の英国EU離脱に伴う市場の動揺もあり、
各投信ともにトータルリターンではマイナスでの比較となりました。また、リターンだけでなく、リスク
(変動)の指標である標準偏差、シャープレシオ(*)についてもそれぞれの特徴が出ています。

 2016年6月30日現在

ファンド名

さわかみ

ファンド

ひふみ投信

コモンズ30

結い2101

TOPIXインデックス

インデックス225

運用会社

さわかみ

投信

レオスキャピ タルワークス

コモンズ

投信

鎌倉投信

野村

三菱UFJ

国際

純資産(百万円)

248,211

30,596

7,102

23,071

19,942

69,450

販売手数料

2.16%

0.54%

信託報酬

1.08%

1.06%

1.35%

1.09%

0.67%

0.67%

運用年数

16年

7年

7年

6年

27年

17年

             

トータルリターン1年

-21.43%

-2.60%

-18.50%

-7.68%

-22.47%

-22.04%

トータルリターン3年(*)

6.17%

19.67%

   4.95%

4.69%

4.55%

5.85%

トータルリターン5年(*)

7.69%

19.62%

9.75%

8.65%

9.52%

11.26%

             

標準偏差1年

21.30

19.19

21.83

11.08

22.22

22.67

標準偏差3年

16.69

14.92

15.94

7.69

17.19

18.10

標準偏差5年

18.87

15.79

16.41

9.86

18.66

19.00

             

シャープレシオ1年

-1.01

-0.14

-0.85

-0.70

-1.01

-0.97

シャープレシオ3年

0.37

1.32%

0.31

0.60

0.26

0.32

シャープレシオ5年

0.41

1.24%

0.59

0.87

0.51

0.59

             

英国EU離脱決定前日と7/11基準価格比較

2016/06/23

18,873

32,026

20,266

15,399

5,669

10,281

2016/07/11

18,184

32,385

20,020

15,351

5,489

9,957

下落率

-3.65%

+1.12%

-1.21%

-0.31%

-3.18%

-3.15%

 (*) 年率
 (*) シャープレシオ:リスク(標準偏差)に1単位当たりのリターンを測る指標。
   値が高い程リスクに対して効率よくリターンをあげていることを示す。

(さわかみファンド):純資産残高2500億円と、直販の中では突出した存在ですが、その巨大さ故に、時価
総額が大きく流動性も高い銘柄が中心にならざるを得ず、リターン、リスク(標準偏差)の各指標とも、
インデックス投信との大きな違いは無くなっています。

(ひふみ投信):トータルリターンで、各期間ともインデックスを大きく上回る成績を残しています。
また、リスク(標準偏差)も相対的に抑えた中で、高いリターンを達成しています。 
アベノミクス相場のようなマーケットが好調なときには大型株も組み入れ、不調な時には、例えば円高の逆
風を受けにくいような中小型株を中心に好成績をあげているようです。

ここ1年間の成績を見ても、-2.60%、直近の英国EU離脱ショックでは、7月11日現在で離脱前の基準価格
を回復しており、逆風下でも打たれ強い投信と言えるでしょう。

(コモンズ30):名前の通り、今後の日本を牽引しグローバルにも競争力がある思われる優良30社に厳選
投資する投信です。
ここ数年の相場環境の中では、インデックスに近い運用成績となっていますが、リスクに関しては抑制が効
いているようで、下落局面では相対的にインデックスを上回る成績を残しています。

(結い2101):社会に必要とされる「いい会社」に投資をし、基本的に長期間保有を続けることが基本方針
であり、そもそも、インデックスに勝つという目的での銘柄選択をしていません。(実際、ホームページに
掲載されている投資先企業を見ると、直販投信の中でもさらにユニークな存在であることが分かります。)
従い、アベノミクスの上昇相場では市場に追随できていません。 反面、リスク(10%)リターン
(年率4%)の目標を掲げ、現金比率を高めにするなど、市場の逆風下ではその通り堅実な成績を残してい
ます。今般の英国ショックでも、ほぼ基準価格を回復しています。

■最後に

各投信の比較に関しては、寸評となりましたが、興味を持たれた方は、是非それぞれのホームページで、
運用方針や投資家(受益者)との対話に対する取り組み等をご参照ください。また、これは4社ともに共通
していることですが、各直販投信では、半数以上の投資家(受益者)が毎月定額の積立投資をしています。 
平均毎月1~2万円程度のいわゆるコツコツ投資です。投資を始めるに当たってベストなタイミングは誰
にも分かりません。従い、試しにどれか買ってみようかと考える方は、少しずつ時間を分散して購入する
積立投資で始めるのが、現状のような不安定な市場環境の中では有効な方法といえるでしょう。

2016.7.27 H.U.

投稿者:未来への扉 カテゴリー: 金融

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